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生成AIを社内に広めるには? 国の無料教材で始める研修

自分の部署で最初に生成AIを触り始めたのは、たぶんあなただった。どの業務に使うかを選び、会社の情報をどこまで入れていいかの線を引き、頼み方のコツもつかんだ。おかげで、自分はもう生成AIを仕事に使えるようになっている。ところが、次に手渡されたのは別の仕事だった。「これを社内に広めて」「勉強会をやってくれ」「全社で使えるようにして」。

自分が使えることと、周りに使ってもらうことは、まったく別の技術だ。しかも、専任の情報システム部門も、研修を外注する予算もない。事実上、ひとりで社内教育まで背負っている。もしそういう状況なら、この記事はあなたのために書いた。

先に、答えだけ置いておく。社内研修は、外注しなくても自社で始められる。国(総務省)が無料で配る教材を土台に、まず一部署から小さく勉強会を開き、最後に使い方を一枚に残す。この3つで、一部の人しか使わない状態は防げる。

ひとつ、はっきりさせておきたい。この記事は「すでに失敗したAIを立て直す」話ではなく、「失敗しないように広める」話だ。そして、何を教えるか(中身)は前の3つの記事に譲り、ここでは、どう教え広め、どう残すかだけを扱う。教える中身は、すでに3本にまとめてある。どの業務に使うか、何を入れていいか、どう頼むか。この記事では、その中身を作り直さない。3本を束ねて、研修の教材として使う道を示す。

なお、この記事は2026年7月時点の内容だ。総務省「生成AIはじめの一歩」と、IPA「DX動向2025」に基づいている。

なぜ生成AIは一部の人しか使わなくなるのですか

「広めて」と言われて詰まるのは、あなたの力不足ではない。まず、なぜ一部の人しか使わないまま止まるのか。その構造を先に見ておくと、次にやることが決まってくる。

詳しい人だけが使い、やり方が広がらない

一部の詳しい人だけが使い、そのやり方が、その人の頭の中にしか残らない。すると、周りに広がらないまま止まる。これは、誰かの能力が足りないからではない。教えて、残す仕組みが、まだ無いだけだ。ここを「うちには向いていない」と読んでしまうと、直せるものを捨てることになる。

国の調査でも、DXを進める人材は足りない

これは気のせいではない。IPA(情報処理推進機構)の調査では、日本企業の85.1%が、DXを進める人材の不足を感じており、これは米独と比べても著しく高い(出典:IPA DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成)。

ひとつ、正確に補っておく。この85.1%は、生成AIに限った数字ではなく、DX(デジタル化)を進める人材全体の不足の話だ。しかもこの資料には「執筆者の見解に基づく内容であり、IPAとしての公式見解ではない」という断りがあるので、数値は「DX動向2025」というIPAの調査の結果として引いている。それでも、言えることははっきりしている。外注も採用も難しいなら、担当者自身が社内で教え広める役割を担うしかない。その現在地を、国の調査が裏づけている。

生成AIの社内研修はどう進めればいいですか

進め方は、難しく考えなくていい。やることは、大きく4つだ。

  1. 小さく始める。全社ではなく、自部署・数人・1業務から。
  2. 国の無料教材を土台にする。ゼロから資料を作らない。
  3. 短い勉強会を1回開く。長い集合研修はいらない。
  4. 使い方を一枚に残す。詳しい人が抜けても回る形にする。

この4つを、順に見ていく。

まず小さく、一部署・数人から始める

いちばんの失敗は、いきなり全社研修を組もうとすることだ。立派なカリキュラム、全員参加、半日がかりの座学。そこから入ると、動き出す前に力尽きる。だから、まず自分の部署や、使ってくれそうな数人から始める。最初の題材は、生成AIの業務活用事例をまとめた記事で選んだ「今日試せる1業務」を、そのまま使えばいい。小さく回して、うまくいった形を横に広げる。この順にすると、負担が軽いまま前に進める。

資料はゼロから作らない。国の無料教材を土台にする

研修資料を一から作る時間は、たぶんあなたには無い。作らなくていい。総務省が「生成AIはじめの一歩」という無料の教材を公開していて、これを土台にできる。中身と使い方は、このあとの章でくわしく見る。ここではまず、「国が作った無料の公式教材がある」という事実だけ、頭に置いておいてほしい(出典:総務省 生成AIはじめの一歩)。

短い勉強会を1回開く

勉強会は、短くていい。総務省の教材は「①基礎知識 ②活用場面や入門的な使い方 ③注意点」の3部構成なので、この流れに沿って一度開けば、それだけで形になる(出典:総務省 生成AIはじめの一歩)。基礎はさらっと共有し、活用場面は#1、注意点(安全)は#2、頼み方は#3の中身をあてる。どの記事を、どのパートに使うかは、次の章でそろえる。

教えて終わりにせず、一枚に残す

最後の手順が、いちばん抜けやすい。勉強会をやって満足して終わると、しばらくして元に戻る。だから、使い方を一枚にまとめて残すところまでを、進め方に含める。その残し方は、後半の章でくわしく見る。

生成AIの社内研修では何を教えればいいですか

「何を、どの順番で教えればいいのか、カリキュラムが浮かばない」。ここで多くの人が止まる。でも、研修担当者が中身を一から作る必要はない。

教えるのは3つ。使い道・安全・頼み方

研修で教える中身は、大きく3つに整理できる。どの業務に使うか(使い道)、何を入力していいか(安全)、どう頼むか(プロンプト)。この3つは、すでにそれぞれ別の記事にまとめてある。だから、あなたが中身を書き起こす必要はない。3本をそのまま教材と演習にして、教えて、広めることに集中すればいい。

使い道は、生成AIの業務活用事例をまとめた記事を、勉強会の「活用場面」のパートの教材にする。部署ごとに今日試せる1業務まで具体化してあるので、参加者に「自分の部署ならどれか」を選んでもらう題材に使える。

安全は、生成AIの情報漏洩対策と社内ルールの記事を、「注意点」のパートの教材にする。何を入れていいか、何を入れてはいけないかの線引きは、その記事に譲る。ここで社内ルールを作り直さない。

頼み方は、生成AIのプロンプトの書き方の記事を、演習に使う。実際に打ってみて、返ってきた答えを直す。その手を、参加者にその場で動かしてもらう。

研修担当者の仕事は、この中身を一から作ることではない。すでにある3本を束ねて、教えて、広めて、残すことだ。

社内で使える無料の研修教材はありますか

「そのまま使える資料が欲しい」。研修を任された人が、いちばん欲しいのはこれだと思う。答えを先に言う。ある。しかも、国が無料で配っている。

総務省が「生成AIはじめの一歩」を無料で公開している

総務省が、初心者向けに「生成AIはじめの一歩」という教材を無料で公開している。①基礎知識 ②活用場面や入門的な使い方 ③注意点の3部構成で、全部で75枚のスライドだ。しかも、パワーポイント版には、各スライドで話す内容の参考になるメモが付いていて、研修の実施時間や進め方に応じて、中身を編集して使える。ゼロから資料を作らずに、これを土台に始められる(出典:総務省 生成AIはじめの一歩)。

発行元は、総務省の情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室だ。国が、現場の教育のために作って配っている教材を、そのまま下敷きにできる。これほど心強い土台はない。

使うときの注意(引用はできる・講座で使うなら事前連絡をお願いされている)

ひとつ、正確に伝えておきたい。この教材は、記事や資料の中で引用し、出典を明記して使う分には問題ない。ただし、総務省は「この教材を使って講座を開く方は、事前に連絡してほしい」とお願いしている。担当者が、講座の概要や、資料をどう編集したかを確認するためだ(出典:総務省 生成AIはじめの一歩)。

だから、社内研修でこの教材を使うなら、その一本の連絡だけは通しておく。「誰でも自由に使い放題」ではない、という一点だけ、押さえておけばいい。手間としては、メールを1通送るだけだ。この一手間を惜しまなければ、国の教材を、堂々と社内研修の土台にできる。

研修を属人化させないにはどうすればいいですか

研修は、開いて終わりではない。いちばんもったいないのは、やって満足して、それきりになることだ。教わった人が、やり方を自分の頭の中だけに持っている。その人が異動した瞬間に、また止まる。

研修して終わりにしない。一枚に残す

だから、使い方を一枚にまとめて残す。長いマニュアルはいらない。分厚い手順書を作ろうとすると、また力尽きる。1枚で十分だ。研修でやったことを、その日のうちに1枚に落とす。それだけで、使い方が人から人へ渡っていく。

一枚に書くのは「どの作業に・どう使い・最後に人が何を確認するか」

一枚に書くのは、3つだけでいい。どの作業に使うか。どう頼むか(頼み方の型を、1〜2行で)。そして、最後に人が何を確認するか。この「任せる作業と、人が判断する作業の線」は、生成AIの業務活用事例をまとめた記事にまとめてあるので、その線を一枚に写せばいい。頼み方の型も、生成AIのプロンプトの書き方の記事から1〜2行を借りればいい。ここでも、中身を作り直さない。すでにある3本から、必要な行を一枚に集めるだけだ。

一枚あれば、詳しい人が抜けても回る

この一枚があれば、詳しい人が異動しても、新しく入った人が、それを見て同じように使える。属人化を防ぐというのは、むずかしい仕組みを作ることではない。この一枚を残すことだ。地味に見えて、これが「一部の人しか使わない」を防ぐ、いちばん確実な方法になる。

「一部の人しか使えない」で止まる前に

ここからは、数字の話ではなく、僕が現場で見てきたことを話す。

「使われない」と言われたAIの多くは、教え方より、入れ方と残し方でつまずいていた

僕はAIの立て直しの現場で、この構造を何度も見てきた。「AIを入れたのに、一部の人しか使わない」と言われた現場をよく見ると、原因は教え方のうまい下手よりも、どの業務に入れたか、そして使い方が残っていなかったか、のほうにあることが多かった。つまり、広まらないのは、教える人のセンスの問題ではない。入れ方と、残し方の問題だ。今日見た進め方は、その2つに先回りするために書いた。

一部の人しか使えない状態を、社内に根づかせる

肯定形で言い直しておく。小さく始めて、国の無料教材を土台にして、使い方を一枚に残す。この3つで、一部の人しか使えない状態は、社内に根づかせられる。特別な予算も、専任の研修部門も、いらない。今日から、手元でひとつ始められる。

それでも、すでに会社に入れたAIが、いつのまにか止まっているなら。急いで作り直す前に、まずどこで止まったのかを見るところから始められる。ひとりで抱えず誰かに相談したいときの、相手の選び方はAI導入の立て直し、誰に相談すればいいですかにまとめた。

よくある質問

最後に、この記事に関わるよくある質問をまとめておく。

Q. 生成AIの社内研修はどう進めればいいですか

外注や専任の研修部門がなくても、自社で始められる。まず一部署・数人で小さく試し、総務省が無料で配る教材を土台に短い勉強会を1回開き、最後に使い方を一枚にまとめて残す。この順で進めると、詳しい人が抜けても回る形になる。(出典:総務省 生成AIはじめの一歩

Q. 社内で使える無料の研修教材はありますか

ある。総務省が「生成AIはじめの一歩」という教材を無料で公開している。全75枚のスライドで、パワーポイント版には各スライドで話す内容のメモも付き、研修時間に合わせて編集して使える。ただし講座で使うときは、総務省が事前連絡をお願いしているので、その点は守ってほしい。(出典:総務省 生成AIはじめの一歩

Q. 生成AIの社内研修では何を教えればいいですか

大きく3つだ。どの業務に使うか、何を入力していいか(安全)、どう頼むか(プロンプト)。この3つはそれぞれ別の記事にまとめてあるので、そのまま研修の教材や演習に使える。研修担当者の仕事は、中身を一から作ることではなく、教えて広めて残すことだ。

Q. なぜ生成AIは一部の人しか使わなくなるのですか

詳しい一部の人だけが使い、やり方がその人の頭の中にしか残らないと、周りに広がらないまま止まってしまう。IPAの調査でも、日本企業の85.1%がDXを進める人材の不足を感じている(生成AIに限らずDX全体の数値)。人が足りないなかでは、使い方を仕組みとして残し、社内で教え合う形にするしかない。(出典:IPA DX動向2025

Q. 研修を属人化させないにはどうすればいいですか

研修をやって終わりにせず、「どの作業に、どう使い、最後に人が何を確認するか」を一枚のマニュアルにまとめて残す。詳しい人が抜けても、それを見れば誰でも同じように使える。この一枚が、一部の人しか使わない状態を防ぐ。


本記事は2026年7月時点の内容だ。引用した数値と教材は、総務省「生成AIはじめの一歩」、IPA「DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成」という公式の情報に基づいている。教材やガイドラインは更新されるため、使うときは最新版を確認してほしい。

最後にひとつだけ。今日の進め方で、一部の人しか使えない状態は、社内に根づかせられる。それでも、すでに会社に入れたAIが、いつのまにか止まっているなら。急いで作り直す前に、まずどこで止まったのかを見るところから始められる。死蔵AIセルフ診断は、15問に答えるだけで、いまの状態に名前がつく。無料で、登録もいらない。

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