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生成AIに会社の情報を入れて大丈夫? 情報漏洩対策と社内ルール

前の記事を読んで、「自分の部署の1業務を今日試してみよう」と動き出した。ところが、いざ会社の情報を打ち込もうとすると手が止まる。もしこれが外に漏れたら、怒られるのは自分だ。そう思うと、キーボードに指が乗らない。

その不安は、あなただけのものではない。会社の情報を扱う立場で、しかも社内にルールがない状態で任されているなら、慎重になるのは当然だ。もしそういう状況なら、この記事はあなたのために書いた。

先に、答えだけ置いておく。生成AIは、入れる情報を決めて、生成物を人が確認すれば、会社でも安全に使える。国の評価でも、AI利用のリスクは正式に認められた(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)。だが、その答えは「禁止」ではない。「最小限のルールを決めること」だ。

ひとつ、はっきりさせておきたい。この記事は「何をAIに任せるか」ではなく、「何をAIに入力していいか」の話だ。何に・どの業務に使えるかの全体像は、前の生成AIの業務活用事例をまとめた記事にある。安全な入れ方を考える前に、まず一度「使い道」の地図に戻っておくと、この記事の話が入りやすい。そして、入力する中身をどう書けば良い答えが返るか(頼み方)は、生成AIのプロンプトの書き方の記事にまとめた。

なお、この記事は2026年7月時点の内容だ。国の資料は、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」、個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)などに基づいている。

なぜ生成AIで情報が漏れるのですか

怖いと感じるのは、大げさではない。まずそこを、国の評価で確かめておく。そのうえで、恐怖で止まるのではなく「どう漏れるか」を知る。漏れ方が分かれば、防ぎ方もそのまま見えてくる。

国の評価でも、AI利用のリスクは認められている

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれた。第1位のランサム攻撃、第2位のサプライチェーンや委託先を狙った攻撃に続く上位に入っている(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)。

これは、あなたの不安が空回りではないという裏づけだ。国が公式に「AIの使い方にはリスクがある」と位置づけた。ただし、大事なのはここから先だ。怖さで手を止めるのではなく、その中身を見て、対策に変えていく。

漏れるのは、主に3つの型

IPAが「AIの利用をめぐるサイバーリスク」で示している中身を、現場の言葉に置き換えると、だいたい3つになる。ひとつ目は、AIへの理解不足による、意図しない情報漏えい。知らないうちに、機密を入力してしまう型だ。ふたつ目は、AIの生成・処理結果を鵜呑みにすること。誤りや、他人の権利を侵す内容に気づかないまま使ってしまう。3つ目は、AIそのものが攻撃に悪用されること(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)。

この3つは、脅かすために並べたのではない。後半で渡す対策と、そのまま裏表になっている。1つ目は「入れない情報を決める」で防ぐ。2つ目は「生成物は人が確認する」で防ぐ。つまり、漏れ方が分かれば、やることは決まってくる。

具体的な会社の漏洩事件を、ここで名指しすることはしない。伝聞や不確かな情報で不安を煽っても、あなたの役には立たないからだ。どんなときに漏れるかは、この3つの型で十分につかめる。

生成AIは会社で使っても大丈夫ですか

使用してよいのか。その問いには、条件つきで「使える」と答える。答えは「禁止」でも「野放し」でもない。その中間に、現実的な道がある。

答えは「使える。ただし、ルールを決めてから」

前の章で見たリスクは本物だ。でもそれは「使うな」という意味ではなく、「決めてから使え」という意味だ。入れる情報を決めて、生成物を人が確認する。この2つがあれば、会社でも安全に使っていける。

国のガイドラインも、個人情報保護委員会の注意喚起も、「使うな」ではなく「適切に使うために気をつけること」を示すために作られている。つまり、正しい向き合い方は最初から用意されている。あとは、それを自分の会社の大きさに合わせて、最小限の形に落とすだけだ。

怖いからと全面禁止にすると、別の失敗が始まる

ここでひとつ、先回りして言っておきたいことがある。怖さのあまり「うちはAI禁止」と決めてしまうと、リスクは消える。だが、そのかわりに「導入したのに、誰も使わないAI」が残る。前の記事の終わりで触れた、あの構造にそのまま戻ってしまう。

だから、この記事の着地は「禁止」ではない。最小限のルールを決めて、安全に使い続けること。この理由は、記事の後半でもう一度、僕自身の言葉で話す。

生成AIに個人情報を入力してもいいですか

いちばん多い、具体的な迷いがこれだ。「この顧客の名前、貼っていいのか」。ここに、できるだけはっきり答える。ただし、法律上の可否を僕が断定することはしない。ここで示すのは、公式の注意喚起がどう言っているか、という整理だ。

入れていい情報・入れないほうがいい情報の線引き

基本の線は、機微度の高い情報は入れない、だ。入れないほうがよいのは、顧客や取引先の個人情報、社外秘や未公開の情報、契約書や見積といった取引に関わる情報、独自のノウハウやソースコードなど競争力の源泉になるもの、そしてマイナンバーのように法令上とくに扱いが重い情報だ。

逆に、比較的差し支えないとされやすいのは、すでに公開されている情報、社名や固有名詞を伏せた一般的な相談、自分が書いた文章の推敲、個人や会社が特定できないように匿名化した内容、一般に手に入る情報の要約や整理だ。ただし、これも「絶対に安全」という意味ではない。使うサービスの規約と、自社の規程を確認したうえで、という前提がつく。

この整理の土台にしているのは、個人情報保護委員会の注意喚起だ。そこでは、個人情報を含むプロンプトの入力は、特定した利用目的の達成に必要な範囲で行うこと、とされている(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」令和5年6月2日)。

大事なので繰り返す。ここに書いたのは一般的な整理であって、「入れていい=合法/入れてはいけない=違法」という判定ではない。実際の可否は、自社の規程、使うサービスの規約、そして個別の事情による。最終的な判断は、自社のルールと専門家(弁護士など)に確認してほしい。

無料版と法人プランで、入れた情報の扱いが違う

もうひとつ、知っておくと迷いが減ることがある。同じサービスでも、無料版や個人向けと、法人向けのプランや学習除外の設定とでは、入力したデータが学習に使われるかどうかの扱いが違う場合がある。

個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入れる前に、サービス提供事業者が、その入力を機械学習に利用しないことを十分に確認するよう求めている(出典:個人情報保護委員会 注意喚起 令和5年6月2日)。だから、順番はこうなる。まず、使うサービスとプランを会社で決める。そのうえで、その公式規約を自分の目で確認する。

ここで、特定のサービスの現在の挙動を断定するのは避けたい。「あのサービスの無料版は必ず学習に使われる」「この法人プランは絶対に学習しない」といった言い方は、規約が変わればすぐに嘘になる。だから僕は、こう言うにとどめる。サービスによって扱いは違う。使うサービスの公式規約で、必ず確認する。

生成AIの社内ルールは何を決めればいいですか

ここが、この記事のいちばん渡したい部分だ。専任の情報システム担当がいない会社で、あなたが事実上ルールも決めることになっているなら。今日から叩き台にできる、最小限の社内ルールを持ち帰ってほしい。

まず、ゼロから作らない。公式のひな形を叩き台にする

社内ルールは、一から書き起こす必要はない。JDLA(日本ディープラーニング協会)が「生成AIの利用ガイドライン」のひな形を公開していて、多くの会社がこれを叩き台にしている(出典:JDLA 資料室)。国のAI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省)も、上司に「公式の裏づけ」を示す材料として使える(出典:AI事業者ガイドライン)。

これらを、自社に合わせて削ったり足したりするのが現実的だ。なお、こうしたひな形やガイドラインは更新されるので、使うときはその時点の最新版を確認してほしい。

最小限の社内ルール5項目

ここから渡す5項目は、あくまで叩き台だ。使うときは3つ、心にとめてほしい。ひとつ、これは完成品ではなく出発点であること。ふたつ、自社の実情に合わせて調整すること。3つ、法的な最終判断は専門家(弁護士など)に確認すること。この枠の中で、コピーして使ってもらえればいい。

  1. 入れない情報を決める。 顧客や取引先の個人情報、社外秘や未公開の情報、契約や見積の取引情報、独自のノウハウ。こうした機微度の高い情報はプロンプトに入れない。入れる前に「これは公開されても困らないか」を一度考える(根拠:個人情報保護委員会 注意喚起 令和5年6月2日)。
  2. 使うサービスとプランを会社で決める。 各自が思い思いのツールを使う状態をやめ、会社として使うサービスとプランを決める。入力が学習に使われない設定やプランを基準にし、その公式規約を確認する(根拠:同 注意喚起)。
  3. 生成物は人が必ず確認してから使う。 AIの出力をそのまま外に出さない。事実の正しさ、誤り、他人の権利を人が確認してから使う。鵜呑みにしない(根拠:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)。
  4. 任せる業務と、人が判断する業務を分ける。 下書き・要約・整理・案出しはAI、最終判断・対外送信・数字の確定は人。何を任せるかの線引きは、前の業務の活用事例をまとめた記事にまとめてある。
  5. 相談先と、ルールの見直し時期を決める。 迷ったときに相談できる責任者や窓口を決める。ガイドラインは更新されるので、ルール自体も定期的に見直す時期を決めておく。

数を増やさないことも、ルールのうちだ。「最小限」と言ったのは、増やせば増やすほど、現場が守れなくなるからだ。会社として足したいものを足すのは自由だが、まずはこの5つから始めれば十分に回る。念のため書いておくと、この5項目を入れれば法的に安全になる、という話ではない。あくまで、安全に使い続けるための出発点だ。

作ったルールを、一部の人だけでなく社内の皆が守れる状態にする段になったら、生成AIを社内に広める研修の進め方にまとめた。

過剰な禁止で、AIを殺さない

ここからは、数字の話ではなく、僕が現場で見てきたことを話す。

僕はAIの立て直しの現場で、この構造を何度も見てきた。漏洩が怖い。だから、いっそ全面禁止にする。たしかに、漏れるリスクは消える。だが同時に、AIも使われなくなる。そして半年後、「導入したのに成果が出ない」という、最初の失敗にそのまま逆戻りしている。

怖さから禁止に振り切るのは、いちばん簡単で、いちばんもったいない選択だ。禁止か、野放しか。その二択で考えるから苦しくなる。本当の分かれ道は、そこにはない。最小限のルールを決めて、安全に使い続ける。これが、止まらないための逆算だ。

だから残すべきは、禁止ではなく、最小限のルールのほうだ。しかも、担当者ひとりの頭の中ではなく、現場の誰もが同じように使える形で残す。さっきの5項目に、迷ったときの相談先を書き添えておく。それだけで、AIは止まらずに、会社の中に根づいていく。

なお、「二択で考えると苦しくなる」のは、そのツールを続けるか解約するか、という判断でも同じだ。やめる・残す・立て直すの三分類で切り分ける考え方は、効果が出ないAIツール、解約すべきですかにまとめた。

よくある質問

最後に、この記事に関わるよくある質問をまとめておく。

Q. 生成AIは会社で使っても大丈夫ですか

入れる情報を決めて、生成物を人が確認すれば、会社でも安全に使える。IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2026」でAI利用のリスクを組織向けの脅威に選んだが、それは「使うな」ではなく、「ルールを決めて使うべきだ」という意味だ。(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026

Q. 生成AIに個人情報を入力してもいいですか

顧客の個人情報や社外秘は入れないのが基本だ。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトの入力は特定した利用目的の達成に必要な範囲で行い、事業者が入力を機械学習に利用しないことを十分に確認するよう注意喚起している。最終的な判断は、自社の規程と専門家に確認してほしい。(出典:個人情報保護委員会 注意喚起 令和5年6月2日

Q. 無料版のChatGPTを仕事で使ってもいいですか

サービスやプランによって、入力データの扱いが違う場合がある。学習に使われない設定や法人向けプランを会社の基準にし、使うサービスの公式規約を必ず確認してほしい。個人情報保護委員会も、事業者が入力を機械学習に利用しないことを十分に確認するよう求めている。(出典:個人情報保護委員会 注意喚起 令和5年6月2日

Q. 生成AIの社内ルールは何を決めればいいですか

最低限、①入れない情報を決める②使うサービスとプランを決める③生成物は人が確認する④任せる業務と人が判断する業務を分ける⑤相談先と見直し時期を決める、の5つだ。JDLAのひな形やAI事業者ガイドラインを叩き台にできる。自社に合わせて調整し、法的な点は専門家に確認してほしい。(出典:JDLA 資料室AI事業者ガイドライン

Q. なぜ生成AIで情報が漏れるのですか

主に、AIへの理解不足による意図しない入力、生成結果を鵜呑みにすること、AIの悪用の3つだ。IPAは2026年、AI利用のリスクを組織向けの「情報セキュリティ10大脅威」に選んだ。(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026


本記事は2026年7月時点の内容だ。国の資料は、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」、個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)、AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省)、JDLAのひな形に基づいている。ガイドラインは更新されるため、実際に使うときは最新版を確認してほしい。

最後にひとつだけ。もし、漏洩が怖くて「AI禁止」にしてしまい、そのまま活用が止まっているなら。禁止を解く前に、まずどこで止まったのかを見るところから始められる。死蔵AIセルフ診断は、15問に答えるだけで、いまの状態に名前がつく。無料で、登録もいらない。

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