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生成AIのプロンプト、どう書けばいい? 東京都の公式事例で

前の記事で「自分の部署の1業務を今日試してみよう」と動き出し、次の記事で「何を入れていいか」の線を引いた。いざAIに指示を打ってみた。ところが返ってきたのは、当たり障りのない、ぼんやりした答えだった。「やっぱりAIは使えないんじゃないか」。もしそう感じかけているなら、この記事はあなたのために書いた。

先に、ひとつはっきりさせておきたい。この記事は「何を入れていいか(安全)」ではなく、「どう頼むか(質)」の話だ。ここでは、返ってくる答えの質だけを扱う。

的外れな答えが返ってくるのは、多くの場合ツールの性能ではなく、指示の出し方が原因だ。立場・目的・出力形式の3つを指定すれば、同じAIでも返る答えは変わる。しかも一度で決めなくていい。出てきた答えを見て、対話で直していける。この記事は、その直し方を具体的に渡すために書いた。

頼み方を直す前に、まず「どの業務に使うか」の地図へ一度戻っておくと、この話が入りやすい。どの業務から試すかの全体像は、前の生成AIの業務活用事例をまとめた記事にある。そして、プロンプトに「入れていい情報」の線引きは、生成AIの情報漏洩対策と社内ルールの記事にまとめた。安全の話はそちらにゆずる。

この記事は2026年7月時点の内容だ。東京都デジタルサービス局「都職員のアイデアが詰まった 文章生成AI活用事例集」(2024年1月)と、東京都が2023年8月に策定した文章生成AI利活用ガイドライン、そしてOpenAI公式の案内に基づいている。

生成AIのプロンプトとは何ですか

まず、この記事で使う言葉をそろえておく。「プロンプト」という言葉が何を指すのか。ここがはっきりすると、直す対象が見えてくる。

プロンプトは「AIから応答を引き出すための指示・命令文」

東京都の定義をそのまま借りる。プロンプトとは、文章生成AIから応答を引き出すための、指示・命令文のことだ(出典:東京都デジタルサービス局「都職員のアイデアが詰まった 文章生成AI活用事例集」2024年1月)。

大事なのは、この定義から見えてくることだ。答えの質は、この指示文でほぼ決まる。だから、返ってきた答えがぼんやりしていたとき、直す相手は「AI」ではない。「指示文」のほうだ。ここを取り違えると、直せるものを直さないまま「使えない」と結論づけてしまう。

この記事が直すのは「頼み方」。入れていい情報の線引きは別の話

念のため、もう一度だけ切り分けておく。この記事が扱うのは「どう頼むか(頼み方の質)」だ。会社のどんな情報を入力していいか、という「何を入れるか(安全)」の話ではない。個人情報や社外秘をプロンプトに入れていいかどうかは、生成AIの情報漏洩対策と社内ルールの記事にまとめてある。安全の線引きが気になる人は、先にそちらを読んでおくといい。

なぜ生成AIは思った通りに答えてくれないのですか

ぼんやりした答えが返ってきたとき、「AIは使えない」と感じるのは大げさではない。だが、そこで手を止める前に、原因を一度見ておく。原因が分かれば、直し方はそのまま見えてくる。

漠然と打つだけでは、求める答えは返らない

東京都の事例集は、この点をはっきり書いている。回答は、プロンプトを基にしか出力されないため、条件を提示せず、漠然と入力するだけでは、求めている回答は得られない、と(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」2024年1月)。

つまり、ぼんやりした答えは「AIの限界」ではなく、「指示に条件が足りない」というサインだ。ここを「AIは使えない」と読んでしまうと、あと少しの手直しで届くものを、まるごと捨てることになる。もちろん、AIの性能が原因のこともある。それは否定しない。ただ、まず直せるのは、たいてい指示の側だ。

だから、直す順番は「立場・目的・形式、そして対話」

この記事の地図を先に置いておく。直し方はシンプルだ。まず、AIにどんな立場で書かせるかをはっきりさせる。次に、目的と背景を具体的に伝える。そして、出力の形式を指定する。この3つで一度打ってみて、返ってきた答えを見て、対話で直していく。恐怖の話で終わらせず、手順の話で終わらせる。その手順を、ここから順に見ていく。

生成AIのプロンプトはどう書けばいいですか

まず渡したいのは「型」だ。ゼロから発明する必要はない。東京都が公式に示している3つのコツを、そのまま使えばいい。

公式の3つのコツ(東京都デジタルサービス局)

東京都が挙げるコツは3つある。この3つを足すだけで、同じAIでも返る答えが変わる(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」1-4「プロンプトとは」/1-5「プロンプトのコツ」)。東京都は、2023年8月に策定した文章生成AI利活用ガイドラインに基づいて、この事例集を作っている。

  1. 立場をはっきりさせる。 AIにどんな役割・立場で書かせるかを、先に与える。「あなたは丁寧なビジネスメールを書く担当者です」のように、役割を指定する。
  2. 目的・背景を具体的に指定する。 何のために、どんな前提で使うのかを書く。前提や課題を整理して渡すと、答えの狙いが定まる。
  3. 出力形式を指定する。 文字数、箇条書き、ですます調など、返してほしい形を指定する。「200字で」「箇条書きで」と一言添えるだけでいい。

難しい横文字のテクニックを覚える必要はない。役割を与える、目的を伝える、形を指定する。この現場の言葉の3つで足りる。

3つを見出しで整理すると、打ちやすくなる

東京都は、プロンプトを「#」つきの見出しで項目ごとに整理する書き方も紹介している。3つのコツを、この形に当てはめると打ちやすい。たとえば、こういう骨組みだ。

#役割
あなたは◯◯の担当者です。
#目的・背景
◯◯のために、◯◯という前提で使います。
#出力形式
200字で/箇条書きで/ですます調で。
#内容
(ここに材料を貼る)

この骨組みは、東京都の型をもとに僕が空欄の形にしたものだ。◯◯の部分を自分の業務の言葉で埋めるだけで、立場・目的・形式の3つがそろったプロンプトになる。毎回ゼロから文章を考えるより、この見出しを埋めていくほうが速いし、抜けも起きにくい。

AIから良い答えを引き出すコツは何ですか

型が分かったら、次は実例だ。弱いプロンプトと、3つのコツで直したプロンプトを並べて見る。これがこの記事のいちばん渡したい部分だ。直したほうは、東京都が公式に公開している活用事例のプロンプトを土台に、民間の業務の言葉へ書き換えている。

ひとつ、正確に書いておく。この事例集について、東京都は「掲載されているプロンプトは、活用事例のイメージであり、必ずしも実際の実務において使用したものではありません」と明記している。だから「都の職員が実務で使ったプロンプト」ではなく、「東京都が公式に公開している活用事例のプロンプト」として引く。以下の「弱い例」のほうは、対比のために僕が作った一般的なもので、東京都のものではない。

弱いプロンプト vs 直したプロンプト(お詫びメールの下書き)

たとえば、取引先へのお詫びメールをAIに書かせたいとする。弱い頼み方はこうなる。

取引先に、提案が不採用になったことを伝えるメールを書いて。

これだと、誰が誰に、どんなトーンで、どのくらいの長さで書くのかが何も決まっていない。だから、当たり障りのない一般的な文面が返ってくる。まさに、ぼんやりした答えだ。

3つのコツで直すと、こうなる。

あなたは丁寧なビジネスメールを書く担当者です(=立場)。
次の要点を、取引先へのお詫びメールにしてください(=目的・背景)。
ですます調・件名つき・200字程度で(=出力形式)。
要点:先日の面談の御礼/今回のご提案は見送り/お詫びと今後への期待。

立場・目的・形式の3つを足したので、宛先もトーンも長さも定まり、そのまま手直しできる清書が返ってきやすくなる。

この直した例は、東京都の事例集にある次のプロンプトを土台に、民間の業務向けに書き換えたものだ。東京都の原文はこうなっている。「以下の内容を基に、日本語のビジネスメールのベストプラクティスに従い、わかりやすく、整理された清書を作成してください。東京太郎様。先日審査会ありがとう。御社の提案は不採用。すみません。新宿花子より」。東京都はこの例で、「日本語のビジネスメールのベストプラクティスに従い」という指示文を足すことで回答の質を上げられる、と説明している(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」5-1「話し言葉からビジネスメールを作成する」)。くだけた話し言葉と要点を渡すだけで、ビジネス文書の形にできる、というわけだ。

弱いプロンプト vs 直したプロンプト(会議メモの要約)

もうひとつ、会議メモや議事録の要約をAIにさせたいとする。弱い頼み方はこうだ。

この議事録を要約して。

これだと、どのくらい短く、誰向けに、どんな形式で要約するのかがない。だから、長さも粒度もばらついて、そのまま社内共有には使いにくいものが返ってくる。

3つのコツで直すと、こうなる。

次の会議メモを、社内共有用に要約してください(=立場・目的)。
決定事項・次のTodo・保留事項の3つに分け、箇条書きで、200字程度で(=出力形式)。
(ここに本文を貼る)

目的(社内共有)と形式(3つに分ける・箇条書き・字数)を指定したので、そのまま貼れる要約に近づく。もし長すぎたら、次の章で見る「対話で直す」一手でさらに縮められる。

この例も、東京都の事例集にあるプロンプトが土台だ。東京都の原文は「下の文章を要約してください。カタカナ語は優しい日本語に変換し、できるだけわかりやすい箇条書きにしてください」で、続けて「よく要約できていますが、まだ長いです。さらに半分程度に短くしてください」と重ねている(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」4-1「文章の要約をしてもらう」)。

例文は、ゼロから作らなくていい

ここまで見てきたとおり、良いプロンプトはゼロから発明するものではない。東京都デジタルサービス局は、34の活用事例とそのプロンプトを公式に公開している。しかも、この事例集は、著作権法の範囲内で、発行元を明記すれば引用・転載して使える(出典:東京都「都職員のアイデアが詰まった文章生成AI活用事例集」の公表について、報道発表「4 その他」)。

だから、やることはシンプルだ。公式の事例を土台にして、自分の業務の言葉に入れ替える。ただし、さっきも書いたとおり、掲載されているプロンプトは「活用事例のイメージ」であって、必ずしも実務で使われたものとは限らない。そのまま貼って終わりにせず、自分のメール、自分の議事録、自分の報告文に合わせて言葉を置き換える。この一手間が、公式の型を自分の道具に変える。どの業務にその型を当てはめるかは、前の生成AIの業務活用事例をまとめた記事が地図になる。

一度で良い答えが出ないときはどうすればいいですか

多くの人がつまずくのは、たぶんここだ。一度打って、期待外れの答えが返ってきて、そこで諦めてしまう。でも、プロンプトは一度で完成させるものではない。

プロンプトは一度で完成させなくていい

OpenAIの公式ガイドも、プロンプトづくりは反復作業だと書いている。まず打ってみて、返ってきた答えを見て、言葉を足す・削る・具体化して直していく(出典:OpenAI「Prompt engineering best practices for ChatGPT」)。東京都の事例集も同じで、いきなり完成を狙わず、プロンプトを重ねて回答をブラッシュアップしていくことを型にしている(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」1-4「プロンプトとは」)。

つまり、一度で決まらないのは失敗ではない。それが普通の使い方だ。手順にすると、こうなる。まず3つのコツで一度打つ。返ってきた答えを読んで、足りない条件を1つだけ足して打ち直す。長さ、対象の読者、トーン、いらない部分の削除。どれか1つでいい。それを、近づくまで数回くり返す。多くの場合、数回で実用に届く。

直すときの言い方(東京都の実例をそのまま)

「直せと言われても、どう言えばいいのか分からない」。そう感じる人のために、東京都の事例集に載っている「直しの一言」をそのまま借りる。次のような短い一言を足すだけでいい(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」1-5「プロンプトのコツ」/4-1「文章の要約をしてもらう」)。

  • さらに半分程度に短くしてください
  • さらにわかりやすい表現にしてください
  • 要点を簡潔にまとめてください
  • 専門用語の説明を追加してください

長い文章を書き足す必要はない。この短い一言を重ねるだけで、答えは少しずつ近づいていく。

ここで見切ると、いちばんもったいない

多くの人が「AIは使えない」と離れていくのは、まさにこの「一度で決まらない」瞬間だ。でも本当は、あと一言足せば届く場所にいることが多い。そこで手を止めてしまうのは、いちばんもったいない。この続きを、少し僕自身の話として書かせてほしい。

「AIは使えない」と見切る前に

ここからは、数字の話ではなく、僕が現場で見てきたことを話す。

「使えない」と言われたAIの多くは、頼み方でつまずいていた

僕はAIの立て直しの現場で、この構造を何度も見てきた。「AIを入れたのに使えない」と言われた現場をよく見ると、ツールの限界ではなく、指示の出し方でぼんやりした答えが返り、そこで人が離れていた、ということが多い。前の記事で書いた「導入したのに使われない」とはまた別の入口だ。使い方の質でつまずいて、一度で見切って離脱する。この引き金は、思っている以上に多い。

はっきり書いておくと、これは誰かの能力の問題ではない。頼み方のコツを、まだ渡されていなかっただけだ。今日見た3つのコツと対話の直し方を知っていれば、防げたケースがたくさんあった。

見切る前に、まず頼み方を直せる

だから、いちばん言いたいのはこれだ。「AIは使えない」と見切る前に、頼み方は直せる。立場・目的・形式の3つを足して、一度で決めず対話で直す。それだけで、返ってくる答えは変わる。今日から、手元のAIで試せる。

身につけた頼み方を、自分だけで終わらせず社内に広める段になったら、生成AIを社内に広める研修の進め方にまとめた。

それでも、会社に入れたAIがいつのまにか止まっているなら。頼み方だけでは動かないところまで来ているのかもしれない。そのときは、急いで作り直す前に、どこで止まったのかを見るところから始められる。

よくある質問

最後に、この記事に関わるよくある質問をまとめておく。

Q. 生成AIのプロンプトとは何ですか

文章生成AIから応答を引き出すための、指示・命令文のことだ。条件を示さず漠然と入力するだけでは、求める答えは返らない。だから、質を上げる相手は「AI」ではなく「指示文」のほうだ。(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」2024年1月

Q. 生成AIのプロンプトはどう書けばいいですか

東京都は3つのコツを挙げている。①AIの立場をはっきりさせる②目的・背景を具体的に指定する③文字数や箇条書きなど出力形式を指定する。この3つを足すだけで、返る答えが変わる。(出典:東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」

Q. AIから良い答えを引き出すコツは何ですか

役割を与え、目的と背景を具体的に伝え、出力形式(長さ・箇条書きなど)を指定することだ。東京都は公式の活用事例集で、こうしたコツを使ったプロンプト例を34件公開しており、発行元を明記すれば引用して使える。ただし掲載例は活用事例のイメージなので、自分の業務に合わせて書き換えて使う。(出典:東京都 報道発表「4 その他」

Q. 一度で良い答えが出ないときはどうすればいいですか

一度で完成させようとせず、出てきた答えを見て、言葉を足す・削る・具体化して打ち直す。OpenAIも東京都も、プロンプトは対話で重ねて良くしていくものだと示している。(出典:OpenAI「Prompt engineering best practices for ChatGPT」東京都デジタルサービス局「文章生成AI活用事例集」

Q. プロンプトの例文はどこで手に入りますか

東京都デジタルサービス局が「文章生成AI活用事例集」で34の活用事例とプロンプトを公開しており、著作権法の範囲内で、発行元を明記すれば引用・転載して使える。ただし掲載プロンプトは活用事例のイメージなので、自分の業務に合わせて書き換えて使う。(出典:東京都 報道発表「4 その他」


本記事は2026年7月時点の内容だ。引用したプロンプトと事例は、東京都デジタルサービス局「都職員のアイデアが詰まった 文章生成AI活用事例集」(2024年1月)、東京都が2023年8月に策定した文章生成AI利活用ガイドライン、OpenAI公式の案内に基づいている。掲載されているプロンプトは活用事例のイメージであり、必ずしも実務で使用されたものとは限らない。ガイドラインやツールの仕様は更新されるので、使うときは最新版を確認してほしい。

最後にひとつだけ。「AIは使えない」。そう見切ってしまう前に、今日見たとおり、返ってくる答えは頼み方を変えれば変わる。それでも、会社に入れたAIがいつのまにか止まっているなら。急いで作り直す前に、まずどこで止まったのかを見るところから始められる。死蔵AIセルフ診断は、15問に答えるだけで、いまの状態に名前がつく。無料で、登録もいらない。

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