Q / 補助金と解約
IT導入補助金で入れたAIツール、解約したら返還ですか
条件次第で全額返還と年10.95%の加算金があり得ます。ただし辞退届という正規の手続きがあり、いつ・どうやめるかで扱いは変わります。道はあります。
2026年6月時点・公式手引きに基づく
補助金で入れたAIツール。言い出したのは自分で、稟議を通したのも自分。なのに、いまはほとんど誰も開いていない。やめたい。でも、やめたら返還になるのか。それを誰に聞けばいいのかが分からない。
そうやって夜にひとりで調べて、このページにたどり着いた方へ。この記事は、その夜の検索に答えるために書きました。公式の手引きを読み込んで、返還の条件、手続きの流れ、無料で相談できる窓口まで、順番に整理してあります。
ひとつだけ先に。IT導入補助金は2026年から「デジタル化・AI導入補助金2026」に名前が変わりました。旧名称で検索すると古い情報に当たることがあるため、この記事は現行の公式資料に基づいて書いています。
いくら返すか
解約すると、いくら返すことになりますか
まず、いちばん知りたい数字から。公式の「後年手続きの手引き」には、こう書かれています。導入したITツールを1年未満、または実績報告で提出した利用期間未満で解約・使用しなくなる場合、補助事業の辞退とみなされ、交付された補助金の全額返還(加算金等を含む)が必要になります(手引きP.11・交付規程第27・28・31条)。
加算金は、補助金を受け取った日から納付の日までの日数に応じて、返還すべき額に年10.95%が加算されます。納付期限を過ぎると、その翌日からさらに年10.95%の延滞金がつきます(交付規程第29・30条)。
ただし、ここで一度立ち止まってください。手引き自体は「全額あるいは一部返還が発生することがあります」と、幅のある書き方をしています。経過した期間に応じてどう計算されるのか、その式は公開資料からは確認できませんでした。だから僕は「必ず全額」とは書きません。全額か一部かは、最終的に事務局の審査で決まります。
もうひとつ、見落とされやすい条件があります。通常枠(150万円以上・4プロセス以上)で採択された場合、賃上げ目標が要件に入っています。効果報告の前、つまり賃上げ達成の判定前に辞退すると、要件未達成とみなされ、補助金の全額返還の対象になります(手引きP.3、P.11)。
出典: IT導入補助金「後年手続きの手引き」(it-shien.smrj.go.jp)
採択年度にご注意ください。 ここまでの数字と条番号は、令和6年度当初・令和5年度補正の交付規程と「後年手続きの手引き」(最終改訂2025年9月5日)に基づきます。採択年度により規程や条番号が異なります。必ずご自身の採択年度の交付規程・手引き(it-shien.smrj.go.jp)で確認してください。
手続きの構造
なぜ、解約を言い出しにくいのか
解約や利用中止には、「辞退届」を事務局に提出する正規の手続きがあります。複数のツールのうち一部だけを解約する場合でも、補助事業の辞退とみなされます(手引きP.2-3、P.11)。手続きの流れは、手引きのP.7にこう示されています。
- 補助事業者(あなた)が申請マイページで辞退届を作成する。
- IT導入支援事業者がIT事業者ポータルで辞退届を確認する。
- 補助事業者が提出する。
- 事務局が審査する。
原文はこうです。「補助事業者が入力し、IT導入支援事業者の確認後、補助事業者が提出します」。さらに「交付決定を受けた申請を辞退するには、必ずIT導入支援事業者へその旨を伝えてください」とも明記されています。
ここに気づいてほしいのです。やめる手続きの途中に、売った本人の確認が組み込まれています。つまり「やめたい」を最初に伝える相手が、そのツールをあなたに売った会社になる。
あなたが言い出せないのは、気が弱いからではありません。手続きが、そういう形をしているからです。売り手に利益相反があるかどうか以前に、やめる相談を売り手から始めなければならない構造そのものが、口を重くさせます。
手続き自体はオンラインで完結します。申請マイページから辞退理由を2つの選択肢(ITツールの解約/廃業・倒産などその他の事由)から選んで作成し、添付書類はJPG・PNG・PDF(10MB上限)で提出します。
いつやめるか
いつやめるかで、扱いが変わります
もうひとつ、あまり知られていない事実があります。実績報告で提出した利用期間を満了してから使用をやめる場合、辞退届の提出は不要です。ただし、効果報告は必要です(手引きP.3)。つまり、結論は「解約する/しない」の二択ではありません。
- いま、辞退届という正規の手続きでやめる。
- 利用期間の満了まで待って、それからやめる。
- 立て直して、使う。
この三つです。利用期間満了までの残り期間と月額を見比べれば、待つほうが負担が軽い場合もあれば、その逆もあります。どれを選ぶかは、次の話につながります。
なお、ハードウェアなどの処分制限財産を、処分制限期間内に目的外使用・譲渡・交換・破棄などした場合も返還の対象です(交付規程第31条)。ソフトウェアの解約とは別の論点なので、該当しそうな方は手引きをあわせて確認してください。
本題は経営判断
返すかどうかの前に、決めることがあります
ここまでが、制度と手続きの話です。ただ、本題はその先にあると思っています。返還の有無は、手段の話です。本題は「このツールをやめるのか、立て直すのか」という経営判断です。判断材料は三つあります。
- 止まっている原因は何か。ツールそのものの問題か、業務との不一致か、人の問題か。
- 利用期間満了までの残り期間と、それまでに払い続ける月額の比較。
- 立て直した場合に、本当に使う見込みがあるか。
そして、この判断は、売った会社に聞いても答えが歪みます。ベンダーフリーの立場、つまり売り手と利害のないセカンドオピニオンが要る場面です。やめるか、残すか、立て直すかの判断基準は「効果が出ないAIツール、解約すべきですか」に分けて書きました。
僕の仕事(死蔵AIの棚卸しと診断)はこの判断の代行ですが、頼まなくても判断できるように、次に無料の窓口を先に紹介します。
無料の窓口
無料で相談できる公的窓口
売り手と利害のない相手に無料で相談できる窓口が、国の側に用意されています。
- 中小機構 IT経営サポートセンター: IT化の悩みを気軽に相談できるオンライン面談。無料・1回60分・複数回。課題が整理できていない段階でも、整理・見える化から付き合ってくれます。
中小機構 IT経営サポートセンター(公式) - よろず支援拠点: 国が全国に設置している経営相談窓口。無料で、ITに限らず経営の悩み全般を相談できます。
よろず支援拠点(公式)
社交辞令ではなく、本気でおすすめします。まずここで壁打ちしてから決めても、遅くありません。
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- AI導入の補助金、2026年は何が使えますか:入れる前に、公式が言っていることの整理。
- 効果が出ないAIツール、解約すべきですか:やめる・残す・立て直すの判断基準。
- 死蔵AIとは何ですか:使われないまま費用だけ続くAIの定義。
- AI導入の立て直し、誰に相談すればいいですか:相談先の選び方。
- できることと価格:診断・立て直しの中身。
FAQ
よくあるご質問
補助金で導入したツールを解約すると、必ず全額返還になりますか
いいえ、条件によります。1年未満または実績報告の利用期間未満の解約は、全額返還(加算金等含む)の対象と手引きに明記されています。一方で手引き自体は「全額あるいは一部」と幅を持たせており、最終的には事務局の審査で決まります。採択年度の交付規程の確認が前提です。
IT導入支援事業者(販売した会社)に知らせずに、解約の手続きを進められますか
手引き上は進められません。辞退届は補助事業者が作成し、IT導入支援事業者の確認を経て提出する流れと定められています。手引きにも「必ずIT導入支援事業者へその旨を伝えてください」と明記されています。
解約するかどうかの判断を、売った会社以外に相談できますか
できます。無料なら、中小機構IT経営サポートセンター(1回60分・複数回利用可能)とよろず支援拠点があります。売り手と利害関係のない、ベンダーフリーのセカンドオピニオンとして使えます。有償の診断が必要な場合は、僕の仕事(死蔵AIの棚卸しと診断)です。
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最終更新: 2026年6月時点